骨粗しょう症の原因と症状|検査でわかるリスク・予防法を解説
骨粗しょう症とは骨量の減少とともに強度が低下して、骨折しやすくなる病気です。60代女性においては5人に1人、男女合わせて約1,500万人以上の患者数と推測されています。
参考:数字でみる骨粗しょう症|公益財団法人 骨粗しょう症財団
症状がほとんどないため、骨折後にわかる場合も少なくありません。
そこでこの記事では、骨粗しょう症の原因や症状から予防法まで詳しく解説します。正しい知識を身につけて対策していきましょう。
目次
骨粗しょう症とは骨折しやすくなる病気
骨粗しょう症とは、骨が脆くなり、転ぶなどのちょっとしたはずみで骨折しやすくなる病気です。
初期では痛みなどの自覚症状がない場合が多く、早期発見にはFRAXや骨密度検査などのチェックが必要です。
主な原因3つ
骨密度の低下と骨質の劣化により骨強度が低下する骨粗しょう症。その原因はさまざまです。
この項目では、主な原因について解説します。
- 加齢・閉経による骨密度の低下
- 栄養不足
- 生活習慣
加齢・閉経による骨密度の低下
1つは、加齢による骨密度の低下です。年を重ねることで骨密度は減少します。
また、女性は閉経後に骨密度が大きく低下することが分かっています。原因は女性ホルモンの減少です。
女性ホルモンが減少すると骨密度が低下し、骨が弱くなります。
栄養不足
骨質はカルシウムやビタミンD・ビタミンKの充足状態によっても変化します。
これらの栄養素の減少によって骨強度が低下し、骨折リスクが高まります。
働き | 食品例 | |
カルシウム | 骨の主成分 骨の形成を促進 |
牛乳・豆腐・小松菜など |
ビタミンD | カルシウムの吸収を促進して骨を丈夫にする | 紅鮭・まいたけ・卵 |
ビタミンK | カルシウムを骨に取り込み骨を強くする | 納豆・小松菜・ブロッコリー |
生活習慣
過剰な飲酒や喫煙、運動不足は、骨粗しょう症の対処能力を低下させます。
タバコは胃腸の働きを低下させて、カルシウムの吸収を妨げます。
特に女性の場合、女性ホルモンの分泌を妨げるため、骨粗しょう症になりやすい危険因子となります。
お酒の利尿作用はカルシウムの吸収を妨げる可能性があります。
飲みすぎは骨粗しょう症の危険因子になり得るので注意が必要です。
参考:タバコや酒の影響について|公益財団法人骨粗しょう症財団
また、骨は刺激が加わることで強さが増すといわれており、運動不足になると骨密度が低下します。
60代女性の約5人に1人が骨粗しょう症
出典:骨粗しょう症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版|日本骨粗しょう症学会
骨粗しょう症は閉経後の女性に多い病気です。60代の女性では約5人に1人が骨粗しょう症といわれています。
また、40歳以上の骨粗しょう症の患者数は1,280万人(男性300万人・女性980万人)とされており、中年期から注意が必要です。
参考:骨粗しょう症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版|日本骨粗しょう症学会
骨折しやすい部位
骨粗しょう症により骨折しやすい部位は、以下の通りです。
- 背骨(椎体)
- 足の付け根(大腿骨近位部)
- 手首(橈骨:とうこつ)
- 腕の付け根(上腕骨)
骨粗しょう症による骨折の主な原因は転倒です。
転んだ際に、お尻や腕などをぶつけたり、地面に手をついたりすることで骨折することがあります。
また、重たい荷物を持つだけでも骨折することがあります。
骨粗しょう症による骨折が原因で「寝たきり」の生活になることが問題視されています。そのため、転倒をしないための日常生活の意識が重要です。
骨粗しょう症は2つに分類される
骨粗しょう症は、原発性と続発性の大きく2種類に分類されます。
それぞれについて解説します。
原発性骨粗しょう症
原発性骨粗しょう症の主な原因は、閉経や加齢、生活習慣の乱れなどです。
閉経後は女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が減少します。それにより骨を壊す細胞(破骨細胞)が活性化し、骨量が減少します。
また、年齢を重ねると骨を作る細胞(骨芽細胞)の機能が低下することで骨量が減少します。
骨を作るのに必要な栄養素(カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなど)の摂取不足や運動不足、喫煙、アルコールの過剰摂取など、生活習慣の乱れも原発性骨粗しょう症の原因となります。
続発性骨粗しょう症
続発性骨粗しょう症は、病気や薬の投与などによって発症します。
例えば、糖尿病や慢性腎臓病、関節リウマチなどによって引き起こされる場合があります。
また、特定の薬品を長期間使用した場合にも引き起こされる可能性もあります。
【続発性骨粗鬆症の原因一覧】
内分泌性 | 副甲状腺機能亢進症・クッシング症候群・甲状腺機能亢進症・性腺機能不全など |
栄養性 | 胃切除後・神経性食欲不振症・吸収不良症候群・ビタミンC欠乏症・ビタミンA または D 過剰 |
薬物 | ステロイド薬・抗痙攣薬・ワルファリン・性ホルモン低下療法治療薬・SSRI・メトトレキサート・ヘパリンなど |
不動性 | 全身性(臥床安静、対麻痺、廃用症候群、宇宙旅行)・局所性(骨折後など)
|
先天性 | 骨形成不全症・マルファン症候群 |
その他 | 糖尿病・関節リウマチ・アルコール多飲(依存症)・慢性腎臓病(CKD)・慢性閉塞性肺疾患(COPD)など |
出典:骨粗しょう症の 予防と治療ガイドライン 2015 年版|日本骨粗しょう症学会
2㎝以上の身長の縮み・背中や腰の曲がりには要注意
ピーク時から身長が2cm以上縮んだ、または壁に直立して後頭部がつかないほど、背中や腰が曲がった場合は、背骨を骨折している可能性があります。
これらの症状があれば、病院での検査をおすすめします。
老け顔を骨粗しょう症の関係
顔のたるみや頬のコケなど、顔の老化も骨粗しょう症と関係があるといわれています。
オックスフォード大学の研究では、顔の骨密度が体幹骨格と同様、加齢とともに変化することを示唆しています。
特に顔の骨密度の減少は腰椎よりも若い年齢から始まっていることが示されました。
参考:Facial bone density: effects of aging and impact on facial rejuvenation – PubMed
検査方法
骨粗しょう症の検査は複数あります。共通するのは、どの検査も痛みはなく割と短時間で測定できる点です。ここでは、主な2つの検査方法を解説します。
- 骨密度検査
- 骨代謝マーカー(血液・尿検査)
骨密度検査
骨密度検査では、骨の密度を評価します。 骨の中のミネラルがどの程度あるかを測定し、骨密度がいくらあるのかをYAM(Young Adult Mean:若年成人平均値)で表します。
YAMは、同性で健康な若年成人(腰椎20〜44歳、大腿骨20〜29歳)の平均骨密度を100%として、この基準と比較することで現在の骨密度を評価します。
YAM 70%未満で骨粗しょう症の診断となります。
ただし、骨粗しょう症が原因で過去に骨折したことがある場合、骨折部位によってはYAM 80%未満でも骨粗しょう症の診断となる場合があります。
背骨、足の付け根を骨折された方は、それだけで骨粗しょう症の診断となります。
骨密度の検査方法は、DEXA法、MD法、超音波法などがあります。
骨密度検査で骨粗しょう症を診断する方法は、『腰椎・大腿骨』のDEXA法のみです。
DEXA(デキサ)法 | X線で腰の骨や足のつけ根、前腕などの骨密度を測定する。 |
MD(エムディ)法 | X線で手の骨密度を測定する簡易的な方法。お薬による骨密度の上昇効果が判定しづらい。 |
超音波法 | かかとの骨に超音波を当て、骨の強さを測定する。骨折リスクを簡単にスクリーニングする。X線は使用しないため、妊娠中の方も対応可能。 |
骨代謝マーカー(血液・尿検査)
骨代謝マーカーは、骨の新陳代謝の速度を示す指標です。
血液検査、尿検査によって測定します。
値が高い人は骨密度の低下速度が速く、骨折の危険性が高くなります。
骨粗しょう症の診断はできませんが、リスクや治療効果の判定に有用な指標です。
FRAX®で骨粗しょう症のスクリーニングを
FRAX®は10年以内の骨折発生確率を計算するツールです。
WHO(世界保健機関)が作成したプログラムで、骨粗鬆症による骨折の発症にかかわるさまざまな危険因子を入力することで、発生率(%)を得ることができます。
FRAXは無料でご利用可能です。
▽ご興味がございましたらこちらよりお試しください
フラックス® 骨折リスク評価ツール
【記入例】
『Major osteoporotic』が以下の値以上の場合、骨粗鬆症の可能性があります。整形外科にご相談ください。
年代 | 50代 | 60代 | 70代 |
FRAX カットオフ値 |
5% | 10% | 15% |
※カットオフ値が上記を下回った場合でも、骨粗しょう症の可能性はあります
参考:FRAX を用いた新たな骨粗鬆症スクリーニング法の開発
ステロイド内服一覧(種類・商品名)
種類 | 商品名 |
ヒドロコルチゾン (コルチゾール) | コートリル |
プレドニゾロン | プレドニン |
メチルプレドニゾロン | メドロール |
トリアムシノロン | ケナコルト A |
ベタメタゾン | リンデロン |
デキサメタゾン | デカドロン |
※FRAX®は75歳未満の方に限られ、糖質コルチロイド・関節リウマチ・続発性骨粗しょう症に当てはまる場合には適用されません
治療薬
骨粗しょう症の治療薬には、症状や進行度に応じて、複数の選択肢があります。
- 骨の破壊を抑える薬(骨吸収抑制薬)
- 骨の形成を促す薬(骨形成促進薬)
- その他(ビタミンD製剤、カルシウム製剤)
など
安全に配慮しながら効果を高めるには、用法を守る必要があります。
医師の指示に従い治療を進めましょう。
予防方法
- カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなどの摂取
- 日光浴
- ウォーキング・筋力トレーニング
- 禁煙
- アルコールを控える
骨粗しょう症を予防するためには、カルシウムやビタミンなど必要な栄養素の摂取に加えて、ビタミンDを体内で合成するために日光浴を行いましょう。
それに加えて、ウォーキングや筋力トレーニングなど、骨に刺激が加わる運動がおすすめです。
例えば、青年期にバスケットボールをしていた男女では、高齢期において大腿骨頸部骨密度が高く、青年期にバレーボールをしていた女性において、高齢期の腰椎骨密度が高い可能性が明らかになりました。
一般人であっても、数十年前の中学・高校生期の運動経験によって得られた骨利益が高齢期まで長期に渡って維持される可能性を示しています。
参考:青年期にバスケットボールやバレーボールをすると高齢期の骨密度が高くなる?|ニュース&イベント|順天堂大学
早めの検査・普段からの予防を心がけよう
骨粗しょう症は骨量や強度の低下によって骨折しやすくなる病気です。
特に高齢者や閉経後の女性に多く見られます。
症状が出にくいため、骨密度検査や血液検査による早期発見が重要です。
また、予防にはカルシウム・ビタミンD・Kを含む食事、日光浴、運動、禁煙・節酒が効果的です。
骨折を防ぐため、生活習慣の改善を心がけましょう。