診療看護師(NP)インタビュー|医療における新しい役割

診療看護師(NP:Nurse Practitioner)は、医師と連携しながら一定の診療を担うことができる、高度実践看護師(APN:Advanced Practice Nurse)です。倫理的かつ科学的根拠に基づいた診療を行い、患者のQOL(生活の質)向上に貢献します。

2025年4月時点での日本における資格認定者はわずか984名。100万人を超える看護師の中でも、極めて希少な存在です。

この記事では、診療看護師として地域医療の現場で活躍する渡部さんにお話を伺いました。

NPを目指したきっかけや現場での役割、医師や看護師から見たその価値など、診療看護師の役割について詳しくご紹介します。

出典:日本NP学会
   日本NP教育大学院協議会

医療知識の不足を痛感し、診療看護師(NP)を志すように

診療看護師(NP)である渡部さんがこの道を志したのは、ある患者さんがきっかけでした。

外科系病棟で勤務をしていた時、足の骨折で入院されたご高齢の女性の患者さんがいらっしゃいました。いつも笑顔で話しかけてくださる、明るく元気な方でした。

骨折の手術は無事終わりましたが、入院中に別の病気を発症しました。手術で一命はとりとめたものの、人工呼吸器をつけた状態でICUに入ることとなりました。

ICUから病棟に戻って以降、その方を担当することになりました。しかし病態は複雑で、さまざまな医療処置が必要でした。医師の会話内容も高度なものが多く、医療者として自身の力不足を感じました。

その後、病状が悪化していき、発症から約1カ月後、その患者さんはお亡くなりになりました。

「もっと何かできたのではないか?」

自身の無力さを痛感し、よりレベルの高い知識・技術・思考を身に着け、患者さんにとって本当に力になれる存在になりたい。そう強く思ったのが、診療看護師(NP)を目指すきっかけでした。

診療看護師(NP)として働く魅力|患者背景を考えた実践と多職種との連携

診療看護師(NP)は、症状や背景疾患から何の病気かを考え、問診・診察を行います。必要な検査があれば医師に提案し、その後の方針決定・介入まで携わります。

その中で、ご本人の思いや価値観やご家族の意向、病態、生活環境など患者さんの背景を加味し、「どういう介入をすれば患者さんの人生がより良くなるのか?」という視点を大切にしています。

また、医師と多職種の橋渡し役として、現場全体の調整役を果たすことも大切だと感じています。多職種が医師に話しづらい場面のほか、医師が考えている方針が医師以外のスタッフに伝わっていないケースも少なくありません。

双方の立場を理解し、患者さんに関わっている医療職者が同じ方向を向いて実践ができるように関わる。そんな調整役としての役割も、診療看護師(NP)には求められていると感じます。

活躍の場と業務範囲|地域医療・在宅・施設など多様なフィールドで活躍

渡部さんは以下のような医療・福祉の現場で活躍しています。

  • クリニック(外来部門、健診部門など)
  • 在宅領域(高齢者福祉施設など)

医師や多職種と連携し、地域に根ざしたプライマリケアを実践しています。

現場の看護師の声|医師・看護師の視点を持った頼れる存在

現在、医師とともに地域の介護施設に往診している渡部さん。往診先の介護施設で働く看護師Aさんは、渡部さんと一緒に働くことで生まれた変化についてこう話します。

正直、最初は診療看護師(NP)という存在を知りませんでした。

しかし、今までは医師にしか相談できなかったことも、すぐに渡部さんに聞けるので助かっています。

看護の視点と医師的な考え方、どちらも理解してくれているので、とても安心感があります

週1回来てくれるだけでも、業務全体がスムーズになります。知識と現場感覚の両方がある存在は、本当に頼りになります。

一緒に働く医師の声|診療チームに欠かせない存在

大西メディカルクリニック在宅診療部 統括部長 大西 潤 医師は、渡部さんについてこう語ります。

病歴の聴取から身体診察、アセスメント、治療方針の提案まで、医師と同じ目線で対応できる力を持っています。

総合内科での豊富な経験もあり、診察や判断の的確さが非常に高いです。患者さんの生活背景にまで目を配ってくれるので、医療の質がより包括的に深まっています。
診療の一部を担ってもらうことで、チーム全体の連携や業務効率の向上にもつながっています。

常に学び続け、柔軟に現場に向き合う姿勢は、診療チームに欠かせない存在だと感じています。

診療看護師(NP)を取り巻く課題|認知と制度整備がこれからの鍵に

診療看護師(NP)は、まだ十分に社会に認知されているとは言えず、病院・施設によってその裁量に差があります。

診療看護師(NP)が主治医に近い立場で活動する場合もあれば、医師の補助的な立ち位置として活動する場合もあります。

今後は、診療看護師(NP)が現場で継続的に力を発揮できる体制整備が求められます。

診療看護師(NP)は、医療に新しい形をもたらす存在

診療看護師(NP)は、医師と看護師の視点をもって介入することができる、ハイブリッドな医療職です。

医師や多職種をつなぐ医療の中核的存在として、チーム医療を支える新たな担い手として期待されています。

 「患者さんにとって、より良い実践がしたい」

そう思うあなたにとって、診療看護師(NP)というキャリアは、大きな一歩となるかもしれません。

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