帯状疱疹とは|症状・原因・発症年齢・予防ワクチンなどについて解説
加齢に伴い、発症する可能性が高くなると言われる帯状疱疹。体力の低下を感じ始め、「自分もかかるかもしれない」と懸念される方は多いのではないでしょうか。
帯状疱疹は放っておくと重症化する可能性があるため、予防ワクチンや早期治療を行うことが重要です。
この記事では、帯状疱疹についての概要や予防ワクチンについて解説します。
目次
帯状疱疹とは
帯状疱疹とは、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスによって発症する感染症です。初めは、水疱瘡(みずぼうそう)として発症します。
水疱瘡にかかると1週間程度で症状は治まりますが、その後もウイルスは体内の神経節に潜伏します。免疫力が低下し、潜伏していたウイルスが活性化することで再発するのが帯状疱疹です。
参考:水痘・帯状疱疹の動向とワクチン|国立感染症研究所(NIID)
原因は免疫力の低下
帯状疱疹の原因は、加齢や疲労、ストレスなどによる免疫力の低下です。
体内に侵入した異物を排除する免疫には、「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。
自然免疫は、皮膚や唾液、耳あか、涙やくしゃみ、腸内細菌など、生まれながらに備わっています。
一方、獲得免疫は、過去の感染経験やワクチン接種によって免疫を記憶し、再感染を防いだり、症状を軽くしたりできます。自然免疫で排除できない異物や病原体に対して有効です。
他人からうつることはない
帯状疱疹は、他人からうつることはありません。ただし、帯状疱疹の罹患者が水疱瘡にかかったことがない方へウイルスがうつる場合があります。
帯状疱疹がうつる原因は、水ぶくれ液からの接触感染が中心です。ほかにも、唾液から飛沫感染する場合もあります。
症状
初期症状 | 1週間~ | その後 |
皮膚の違和感・かゆみ・痛み | 紅斑・丘疹・水疱・発熱・痛み | かさぶた |
帯状疱疹の初期には、皮膚の違和感やかゆみ、痛みが生じます。症状が進行すると、皮膚の表面が赤く(紅斑)、ブツブツ(丘疹)が現れ、その後に水ぶくれ(水疱)となります。全身にこうした皮膚病変が生じるのが特徴です。
痛みが増すほか、発熱を伴うこともあるため、免疫抑制薬を服用されている患者様は特に注意が必要です。
参考:ヘルペスと帯状疱疹|皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
発症部位
帯状疱疹は知覚神経の通った部位ならどこでも発症しますが、身体の左右どちらかに集中する傾向があります。
中でも、脊髄の感覚神経が集中する胸髄神経節は発症しやすい部位です。それに加えて、三叉神経領域の第1枝である眼の周囲も好発部位といえます。
参考:ヘルペスと帯状疱疹|皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)
帯状疱疹の発症数と罹患率|年代別・性別分布(1997~2010年)
年代 | 発症率 | 発症数(男性) | 発症数(女性) |
0~9 | 2.50 | 1,864 | 2,052 |
10~19 | 2.85 | 2,806 | 2,518 |
20~29 | 2.29 | 1,801 | 2,050 |
30~39 | 2.05 | 1,845 | 1,997 |
40~49 | 2.59 | 2,323 | 3,231 |
50~59 | 5.29 | 4,491 | 8,022 |
60~69 | 7.12 | 6,045 | 8,560 |
70~79 | 8.18 | 5,756 | 8,028 |
80~89 | 7.36 | 2,051 | 3,789 |
90~ | 5.65 | 233 | 673 |
参考:本邦における帯状疱疹の大規模疫学調査|宮崎医会誌を参考に作成
宮崎医会誌の調査によると、帯状疱疹は50代から罹患率が高くなり、70代でピークに達します。人口の3分の1が80歳までに発症するなど、高齢化と共に発症数も増加傾向にあります。
総務省統計局の人口推計によると、日本の総人口約1億2397万人のうち、50代以上の人口は約6,179万人(総人口の約50%)です。帯状疱疹の発症数は高い水準を維持する可能性があるでしょう。
参考:人口推計の結果【2024年(令和6年)3月1日現在(概算値)】|総務省統計局
20~40代の若年層でも発症率が増えている
出典:帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」
2014年に幼児への水痘ワクチン定期接種を開始してからは、20〜40代の若年層で変化率が最も高くなっています。原因の1つとして考えられているのは、水疱瘡ウイルスに接する機会が減ったことによる免疫力の低下です。
加齢や過労のほか、ストレス、不摂生などでも免疫は低下するため、健康管理には注意が必要です。
60歳以上は帯状疱疹の合併症に要注意
合併症名 | 特徴 |
帯状疱疹後神経痛(PHN) | 稀に皮膚症状が治った後も痛みが続く場合がある。3ヶ月以上続く疼痛を帯状疱疹後神経痛というのが一般的。 |
ラムゼイハント症候群 | 頬部から下顎から肩にかけての帯状疱疹において、同側の顔面神経麻痺、味覚障害、内耳障害を伴う。 |
運動麻痺 | ラムゼイハント症候群が進行して脊髄の前角にまで及ぶと、稀に運動麻痺が起こる。主に上肢に発症し、挙上が困難になる事に加え、筋の萎縮を伴うこともある。 |
腹部膨隆(ぼうりゅう) | 腹部の帯状疱疹では、腹筋の麻痺により同側の腹部が膨隆することがある。また、便秘を伴うこともある。 |
膀胱直腸障害 | 仙骨部の帯状疱疹では、膀胱直腸障害がみられ、尿閉を発症することがある。 |
その他(脳髄膜炎・脊髄炎・脳血管障害・眼瞼結膜炎・ぶどう膜炎・網膜炎・耳鳴・目眩・) | 中枢神経系・血管系・末梢神経系・眼科系・耳鼻科系など、発症部位によって合併症はさまざま。 |
参考:ヘルペスと帯状疱疹Q16(公益社団法人日本皮膚科学会)
参考:ヘルペスと帯状疱疹Q20(公益社団法人日本皮膚科学会)
免疫力が低下している高齢者は痛みや皮疹が重症化しやすいうえ、帯状疱疹後神経痛(PHN)などへの移行リスクも高くなります。帯状疱疹後神経痛発生率は約3%で、60歳以上の方に多くみられます。
初期に重症であるほど発生しやすいといわれているため、高齢の方は特に早期治療が重要です。
帯状疱疹ワクチン接種について
ワクチン名 | ビケン(乾燥弱毒性水痘ワクチン) | シングリックス筋注用(乾燥組換え帯状疱疹ワクチン) |
適用年齢 | 50歳以上 | ・50歳以上 ・帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の者 |
接種回数 | 1回 | 2回(通常2カ月以上あけて6ヶ月以内) |
持続性 | 5年程度 | 少なくとも10年以上(追跡調査中) |
帯状疱疹に対しての予防効果 | ・50~59歳で約70% ・60歳以上で約50% |
・50歳以上で97% ・70歳以上で90% |
帯状疱疹後神経痛に対しての予防効果 | 60歳以上で66.5% | 70歳以上で88.8% |
費用 | 6,000~10,000円 | ・1回 18,000~25,000円 ・2回 36,000~50,000円 |
副反応 | 50.6%に発症(多くは接種部の局所副反応) | ・注射部位副反応 80.8% (疼痛・発赤・腫脹など)・全身性副反応 64.8% (発熱・頭痛・疲労など) |
利点 | ・費用を抑えられる ・1回の接種で済む ・副反応が比較的に軽度 |
・予防効果が高い ・免疫が低下している方でも接種可能 |
参考:兵庫県/帯状疱疹|兵庫県ホームページ
参考:加古川医師会 市民講座
2023年(令和5年)6月以降、帯状疱疹ワクチンはこれまでの50歳以上の方に加えて、「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上の方」が新たに接種対象となりました。
具体的には、次のような症状の方を指します。
- 疾病又は治療により免疫不全である方
- 免疫機能が低下した方
- 免疫機能が低下する可能性がある方
- 上記以外で医師が本剤の接種を必要と認めた方
参考:シングリックス筋注用|医薬品医療機器情報提供ホームページ
当院では、帯状疱疹ワクチン接種を行っております。
詳しくは以下をご覧ください。
【帯状疱疹ワクチン】接種費用の一部助成について
帯状疱疹対策|免疫力を高める4つの方法
帯状疱疹対策には、ワクチン以外に免疫力を高めることも効果的です。
この項目では、免疫力を高める4つの方法を解説します。
- バランスの良い食事
- 良質な睡眠
- 適度な運動
- ストレス解消
1.バランスの良い食事
食事は炭水化物やタンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランスよく摂取するのが理想です。栄養素をバランスよく摂取することで免疫力の向上に繋がります。
例えば、炭水化物は身体を動かすエネルギー源として、タンパク質は主に筋肉や臓器、血液などの組織をつくるために必要です。ホルモンや酵素、抗体などの源にもなるため、免疫力アップに欠かせません。
身体の調整機能を持つビタミンやミネラルが不足すると、健康に悪影響を与えかねませんので、ご飯などの主食、肉や魚などの主菜だけでなく、野菜、果物などの副菜もバランスよく取りましょう。
2.良質な睡眠
質の高い睡眠を取ることで疲労回復や自律神経の整え、免疫力アップを促しましょう。睡眠中には成長ホルモンを分泌さすることで疲労を回復するため、不足すれば自律神経の乱れを引き起こして、免疫力低下の原因となります。
睡眠の質を高めるには、早寝早起きなど一定のルーチンで過ごすほか、日光浴や適度な運動、ぬるま湯(40℃程度)での入浴などを行いましょう。
就寝前のカフェインやアルコールはもちろん、ブルーライトが含まれるスマホ、タブレット操作などは睡眠の質を下げる可能性があるため、なるべく控えましょう。
3.適度な運動
ウォーキングやストレッチなど体を動かすことは、自律神経の調整やリンパ球を増加にも繋がります。低体温が原因で免疫細胞の働きが弱まるともいわれているため、運動で身体を温めるのもいいでしょう。
当院では自宅で行えるセルフケア動画を公開しています。すきま時間にYouTube・Instagramよりご覧いただき、試してみてください。
大西メディカルクリニック公式YouTube
大西メディカルクリニック公式Instagram
4.ストレス解消
ストレスが蓄積すると自律神経のバランスを崩しやすくなるため、趣味などで解消することをおすすめします。ストレス解消には前述した良質な睡眠や適度な運動のほか、映画鑑賞や読書など、好きなことに没頭するのもいいでしょう。
また、笑うことで鎮静作用を持つホルモン分泌が促進される効果があるといわれています。親しい友人と食事をしながら談笑するなど、小さな楽しみを積極的に作ってみてはいかがでしょうか。
参考:免疫力アップの鍵はコレだ|健康づくりかわら版|一般財団法人日本予防医学協会
まとめ|帯状疱疹予防はお早めに
この記事内容のまとめは以下の通りです。
- 帯状疱疹は水痘ウイルスによる感染症で、免疫力低下時に再発する
- 症状は皮膚の違和感やかゆみ、痛みから始まり、水疱や発熱を伴うこともある
- 高齢者や免疫が低下している人は重症化しやすい
- 帯状疱疹にはワクチンがあり、予防に有効
- 予防にはバランスの良い食事や質の高い睡眠、適度な運動、ストレス解消も重要
帯状疱疹は高齢になるほど罹患リスクが高まります。ワクチン接種や免疫力を高める方法など、この記事がお役に立てば幸いです。
当院の帯状疱疹ワクチンについてはこちらから↓
【帯状疱疹ワクチン】接種費用の一部助成について