2025/12/23
更新日2025.12.23
痛風とは?症状・原因・改善法をわかりやすく解説
突然足の親指の付け根に強い痛みや腫れが出て、戸惑っていませんか。こうした症状は、痛風発作の可能性があります。
急に痛みが出た場合でも、原因や対処法を理解しておくことで冷静に対処しやすくなります。この記事では、痛風の症状・原因・改善法をわかりやすくまとめています。
目次
痛風とは尿酸塩結晶によって起こる病気
痛風とは、痛風発作を一度でも起こしたことがある状態を指します。痛風発作は、尿酸塩結晶が関節にたまることで、突然関節が腫れて痛みを生じます。
初回の痛風発作の約70%は、足の親指の付け根(第1中足趾節関節部)に発症します。
痛風は主に男性に多い病気です。2022年の国民生活基礎調査では、痛風による通院患者数は130万人以上と報告されています。
参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況|厚生労働省
発症部位
痛風発作は足の親指以外に、以下の部位に起こる可能性があります。
- 足関節
- 足の甲
- アキレス腱のつけ根
- 膝関節
- 手関節
また、手や足の指、耳などにこぶのようなふくらみが生じる痛風結節ができる場合もあります。
症状
痛風発作は、突然の強い関節の痛みや腫れ、発赤を特徴とします。とくに夜間から早朝にかけて急に始まることが多く、足の親指の付け根(第1中足趾節関節)が最も典型的な発症部位です。
痛みは24時間以内にピークとなり、歩くのも困難なほど激しくなる場合があります。発作は数日〜10日程度で自然におさまることが多いものの、治療をしないと再発を繰り返し、慢性化すると関節に痛風結節ができることがあります。発作時は関節の腫れ・熱感・皮膚の赤みなどの炎症症状がみられます。
痛風の原因
痛風の原因は血液中の尿酸値にあります。尿酸値が上昇して血液中の飽和溶解度を超えると、尿酸が結晶化します。その結晶を白血球が処理する過程で強い炎症が起こることで、痛風発作を発症します。
高尿酸血症
血液中の尿酸値が基準より高い状態をいいます。尿酸値が7.0mg/dL以上になると高尿酸血症と診断され高尿酸血症のまま放置すると痛風のリスクが高まります。
参考:血清尿酸値の正常値は? | 公益財団法人 痛風・尿酸財団
痛風の危険因子
痛風には、食事や飲酒、運動不足などの生活習慣、または一部の薬剤が影響します。
プリン体の多い食品
肉類や内臓類、魚卵などプリン体の多い食品摂りすぎは、尿酸値を上昇させる原因になります。日本痛風尿酸核酸学会の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』には1日400mgを目安にしたプリン体の摂取制限が推奨されています。
【食品中のプリン体含有量(100gあたり)】
| 極めて多い(300mg~) | 鶏レバー・干物(マイワシ)・白子(イサキ・ふぐ・たら)・あんこう(肝酒蒸し)・太刀魚・健康食品(DNA/RNA、ビール酵母・クロレラ・スピルリナ・ローヤルゼリー)など |
| 多い(200~300mg) | 豚レバー・牛レバー・カツオ・マイワシ・大正エビ・オキアミ・干物(マアジ・サンマ)など |
| 中程度(100~200mg) | 肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位や魚類など、ほうれんそう(芽)・ブロッコリースプラウト |
| 少ない(50~100mg) | 肉類の一部(豚・牛・羊)、魚類の一部、加工肉類など、ほうれんそう(葉)・カリフラワー |
| 極めて少ない(~50mg) | 野菜類全般、米などの穀類、卵(鶏・うずら)・乳製品・豆類・きのこ類・豆腐・加工食品など |
参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版|日本痛風・尿酸核酸学会
アルコールの過剰摂取
アルコールは肝臓で代謝される際に多くのエネルギーを消費します。その過程で体内のプリン分解が活発になり、尿酸値を上げやすくなります。
また、酒類はアルコール作用に加えて、プリン体も多く含む製品もあります。特にビールは酵母・麦芽由来のプリン体を多く含むため、摂りすぎると痛風のリスクが高くなります。
尿酸値への影響を抑えるための1日の目安は、以下の通りです。
- 日本酒 1合
- ビール 350〜500mL
- ウイスキー 60mL
- ワイン 148mL
参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版|日本痛風・尿酸核酸学会
過食・高カロリー食・肥満
糖質の摂りすぎや高脂肪の食事、肉類・魚類の過剰摂取は、尿酸値の上昇、痛風の頻度増加につながることが報告されています。
過食や高カロリー食は、尿酸排泄を妨げるうえ、体内で尿酸がつくられやすい状態を生み、痛風の危険因子になります。
また、肥満、とくに内臓脂肪の蓄積は痛風のリスクを高めます。体重が増えると尿酸を排泄しづらくなり、高尿酸血症が進行しやすくなるためです。
運動不足・激しい運動
運動不足は内臓脂肪の蓄積を招きます。結果、尿酸値が上がりやすくなり痛風の危険因子となります。
筋力トレーニングや短距離走などの無酸素運動や脱水を起こすような過度な運動にも注意が必要です。乳酸が増えて尿酸排泄が妨げられ、発作の誘因になることがあります。
ストレス・睡眠不足
ストレスや睡眠不足も、痛風発作を引き起こす要因の一つとされています。
強いストレスがかかると、体内の炎症反応やホルモンバランスが乱れ、尿酸値が上昇しやすくなります。また、睡眠不足は交感神経を刺激し、尿酸を排泄しづらくさせます。
薬剤
一部の薬剤は尿酸値を上昇させ、痛風の発症リスクを高めることがあります。以下の薬剤は尿酸の排泄を妨げたり、体内での尿酸産生を促したりする可能性があり、高尿酸血症を悪化させる可能性が指摘されています。
- 利尿薬
- テオフィリン
- ピラジナミド
- シクロスポリン
- ミゾリビン
また、尿酸を下げる治療薬を開始した直後は、関節内の尿酸結晶が溶け出して炎症を起こしやすくなるため、一時的に痛風発作が増えることがあります。薬を使用している場合は、主治医と相談しながら適切に管理することが重要です。
参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版|日本痛風・尿酸核酸学会
痛風を放置するリスク
痛風を放置するリスクは以下の通りです。
- 関節の変形や動かしにくさ
- 耳の結節などによる外見への影響
- 尿路結石による強い痛みや血尿
また、慢性的な高尿酸血症は腎機能を低下させ、慢性腎臓病(CKD)につながる可能性も指摘されています。(痛風腎)それに加えて、心筋梗塞をはじめとする心血管疾患のリスク増加との関連も報告されています。
痛風発作は自然におさまる場合があるとはいえ、安心できません。
痛風の予防・改善法
痛風は、生活習慣の工夫によって発作の予防や尿酸値の改善が期待できる病気です。ここでは、日常生活で意識したいポイントをわかりやすくまとめています。
食事の見直し
- 食べすぎを避け、適正なエネルギー量を意識する
- 肉類・内臓・魚卵などプリン体の多い食品は量を調整
- 高カロリー食・甘い飲料は控える
- 果糖を多く含むジュースも尿酸値を上げるため注意
飲酒量を控える
- ビールはプリン体とアルコールの両方が尿酸値を上げやすい
- 蒸留酒やワインでも飲みすぎは避け、適量を守る
水分をしっかりとる
- こまめな水分補給で尿酸の排泄を促す
- 脱水は発作の引き金になるため注意
適度な運動を習慣にする
- ウォーキングなどの軽〜中等度の有酸素運動が効果的
- 激しい運動(無酸素運動・急な筋トレ)は発作を誘発するため注意する
体重管理を行う
- 1〜3%の減量でも尿酸値改善に効果
- 急激なダイエットは逆に尿酸値を上げるため避ける
ストレス・睡眠不足を避ける
- 強いストレスや睡眠不足は尿酸値を上げ、発作を誘発しやすいため注意する
- 適度な休息と生活リズムの安定が重要
まとめ|痛風と上手につき合うために
痛風は、尿酸値の管理や生活習慣の見直しによって、予防や進行の抑制が期待できる病気です。
ただし、突然の痛みが落ち着いても、高尿酸血症を放置すると再発をくり返したり、関節や腎臓、心臓にも影響が及ぶことがあります。痛みが強い場合や尿酸値が高い状態が続く場合には、早めに医療機関での診察を受けることが大切です。
大西メディカルクリニック・整形外科の痛風外来にご相談を
大西メディカルクリニック・整形外科では、痛風の可能性がある方に対して、関節の診察や尿酸値の検査、生活習慣の見直しなどを含めた総合的なサポートを行っています。
「足の親指が痛い」「痛みがくり返す」「尿酸値が高いと言われた」など、気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。
適切な検査と診察により、痛風の早期対応や再発予防をサポートいたします。
この記事の監修者
大西 康文 Yasuaki Onishi
医師
資格日本整形外科学会認定整形外科専門医・スポーツ医
日本医師会認定産業医
所属大西メディカルクリニック院長
医療法人社団 奉志会 理事長
この記事を書いたライター
松本 祥敬 Yoshinori Matsumoto
資格YMAA(薬機法・医療法適法広告取扱個人認証規格)


